2015のストーリー その11「サムの危機」
はじめに…
今週から始まるお話は、これまで同様フィクションです。
よろしくお願いしますm(._.)m
ふたたび列車に戻ったチッチとサム。
「リリムさんたちとの出会いは、ちょっとした冒険だったね!」
「そうね!」
「チッチなら今度はどんな冒険がしたい?」
「う〜ん……」
「無人島探検とか?」
「う〜ん……」
「深海の宝物探しとか?」
「う〜ん……」
「ヒマラヤで雪男探し?」
「う〜ん…それはないでしょ(笑)!サムは?」
「僕なら、どんな時も忠実でいられると示せる冒険がいい。僕らが守られていること、導かれていることをみんなに知らせたいから」
「それは素敵!サムらしいね。なら私は、謎を解き明かしてみたいわ!みんなに人が作った幻想から目を覚まして欲しいから」
「チッチらしいな!」
「サムも!」
ふたりは声を揃えて笑った。
その時、サムの携帯が鳴った。
「ルークだ」
電話に出るサム。
「…はい、どうかした?…え?あの件が?…どういうこと?…うん、うん、分かった知らせを待つよ」
電話を切って、難しい顔をしたまま、黙り込むサム。
「どうしたの?」
「彼らのプロジェクトにトラブルが起きたらしい」
「トラブル…?」
「うん、詳しくは分からないけど、僕にも迷惑をかけるかもしれないと言ってる」
「どういうこと?」
「分からない。彼らのやっていたことは、僕のアイデアなんだ、もちろん冗談で話したことだけど、彼らは本当に始めてしまった。面白いけど、危ないから、もうやめたほうがいいと止めていたんだ」
「私も知っている話?」
「いや、君には話していない。話したら君もルークの仲間になりかねないからね!」
「ひどい!……だけど、大変なことにならないといいわねぇ」
「あぁ…」
そこへ、ひとりの紳士が話しかけてきた。
「失礼、あなたはマッコンティ在住のサム・ライダーさんですか?」
「…はい、そうですが」
「諸君!この方が、サム・ライダーさんだ」
そう言った瞬間、車両中の人が立ち上がって、チッチとサムを取り囲んだ。
驚くふたり。
「何ですか?これは?」
サムが尋ねた。
「サムさん、我々とご同行ください」
「何の件ですか?」
「それは、道中でお話しします。とにかく今はあなたに、選択の余地はない。一緒に来て頂きます」
ただならぬ雰囲気に諦めた様子のサム。すっくと立ち上がった。
「サム!!」
列車が駅に到着した。ドアのほうへ向かいながら、サムは振り返ってチッチに声をかけた。
「チッチは心配しなくていい。旅を続けてくれ。すぐ戻ってくるから」
「そんな…サム!」
追いかけるチッチ。
「列車を降りるな!!いいから、君は行くんだ」
「どうして?どうなってるの?どうしてサムが連れて行かれるの??」
「チッチ、黙って」
「あなたはここまでです」
紳士に列車を降りることを阻まれたチッチ。
「あっ……」
列車は容赦なく走り出す。
「サムー!!」
遠ざかっていくサムの姿に向かってチッチは叫んだ。
ひとりぼっちになったチッチ。
「サム…なんで連れてかれちゃうの…?」
泣きべそをかき始めた。
いつもなら、ここでサムがハンカチを出してくれたのを思い出し、また涙が出た。
放心状態でしばらく黙り込んだチッチだったが、やがて決心したようにつぶやいた。
「…サム、いつも助けてもらってばかりでごめんね。今回は必ず私が助けに行くから…私を信じて待っててね」
(次回に続く)