今週のテーマは「実らない木」
2015のストーリー その4「実らない木」
大勢の人がお屋敷に押し寄せ、ドアをドンドン叩いている。
「どうしてくれるのよ!」
「自分のやったことが分かってるのか!!」
「中にいるのは分かってるんだ、出てこい!」
チッチとサムは顏を見合わせた。
列車を途中下車して、散策することにしたふたりだったが、ただならぬ雰囲気に立ち止まった。
力任せに叩く者、体当たりする者でお屋敷のドアは今にも壊れそうになっている。
人がいるのか、いないのか、屋敷の中に人影は見えず、静まり返っている。
中には諦めた様子で帰る者もいたが、ひっきりなしに人がやってきて、騒動は治まりそうにない。
普通のお屋敷のようだったが、よく見ると、表札に会社名が書かれていた。
「ラウプーノの木」
落ちていたチラシを拾ってきたサム。
「頑張らなくても元気になれる!それが奇跡のラウプーノ。一度飲んだら一生イキイキ!」
驚いたふたり。
「これは変よ!」
うなずくサム。
目が合った女性が、恐ろしい形相でこちらに近づいてきた。
「あなたたち、関係者じゃないでしょうね?」
「いや、違います。騒ぎに驚いて。それより何かあったんですか?」
「あなたたち何も知らないの??」
「そうです。旅の途中で」
「どうしてこんなことになってるんですか?」
「私たちだって、こんなことしたくないわよ!でも…」
女性が話し始めた内容は、ふたりが危惧した通りだった。
チッチたちは夜になるのを待つことにした。
夜になれば、さすがに騒動も一旦治まり、中の人に会えるかもしれないと思ったからだ。
(次回に続く)